松原和之の「教育考現学」ブログは引っ越しました!

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

「教育考現学」のブログは引っ越しましたので、今後はこちらからご覧ください。

内容は変わりませんし、頻度も特に変わりません。
ボチボチ思いついた時に更新し、時に真面目に教育について考えたり、時にどうでもいい下らないことを書いていきます。

これからもよろしくお願いいたします。

いつでも、どこでも学べる学習環境づくり

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

北欧の学校を見学して以来、私が「日本の学校もこうなったらいいな」と思っていることの1つは、「いつでも、どこでも学べる学習環境」です。

北欧の学校では、休み時間や放課後に、カフェテリアや廊下に置かれたテーブルを挟んで何人かが集まり、ノートパソコンを開いて、話し合いながら学習をしている姿がよく見られます。
北欧の子どもたちは、自主的に集まって相談し合いながら学習をしているのです。

一方、日本の典型的な学校の姿は、学習するのは教室の中だけ。それ以外の場所では遊んでいるだけというスタイルです。学校によっては教室とは別に自習室を設けているところもありますが、そこは一切私語禁止。黙って1人で勉強するスペースです。

北欧と日本では学習観が違うと言ってしまえばそれまでなのですが、いま日本でもアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)が推奨され、次期学習指導要領の大きな方針の1つになっています。つまり、学習観の転換が求められているのです。

そして、いま先生方は、アクティブ・ラーニングをいかに授業に取り入れるかに躍起になっています。

もちろん、授業において主体的・対話的な学びを取り入れるのも大切なことです。
でも、本当に主体的に学ぶのであれば、授業中じゃなくても自主的に学ぶ姿勢を育てたり、機会や場を増やしたりする方がよくないですか?

グループで話し合って答えを出すような課題を出すとか、相談し合わないと答えが出せない宿題を出すとか。
子どもたちが慣れてくれば、自主的に相談し合いながら、予習や復習をするかもしれません。

そう言うと、先生方は「生徒も忙しくて、昼休みや放課後に集まって学ぶなどという時間はないんですよ」と返してきます。
でも、年に何回かは、文化祭の準備や合唱コンクールの練習で自主的に集まって準備や練習をしていますよね。
実は、その気になれば、協働学習の時間を自主的に作り出すことも可能なんじゃないでしょうか。

もう1つ大切なのは、そのような自主的な協働学習を行うことが可能なスペースの確保です。
北欧の学校は、至る所に、テーブルと4〜5脚のイスのセットが置いてあります。場合によっては、教室内のイスより数が多いかもしれません。気軽に集まって話し合いができる場所がたくさんあるといいな、と思います。

教室は学ぶ所、廊下は歩く所、食堂は食べる所、図書館は静かに本を読む所という画一的な利用法を改めて、学校内をいつでも、どこでも学べる学習環境にするというのはいかがでしょうか。

その姿を思い浮かべると、何だか楽しそうじゃないですか?

AI時代に必要な人間の知性とは何か

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

今月の「ハーバード・ビジネス・レビュー」はとても面白かったです。最近、私が常に考えていることに大きなヒントを与えてくれる内容でした。

そのタイトルは「知性を問う」です。人工知能(AI)の時代だからこそ、人間の知性の本質とは何かを考えなければならない。これは、私の問題意識に重なります。

このタイトルで、4人の方の論文、インタビューが掲載されているのですが、その中の1人、ヤフーCSOの安宅和人氏の論文から、印象に残った点を紹介したいと思います。

安宅氏は、AIが得意なのは情報の識別や予測、実行過程の自動化であり、不完全な情報の中で問いを見立てたり、単層ではないタイプの問いに答えることはできない。知的生産の本質は何らかのイシューに答えを出すことであり、大切なのは正しいイシューの見極めだ、と言います。
仕事の多くは課題解決であり、その要素である(1)課題の性質の見極め、(2)大枠のイシューの見極め、(3)課題の腑分け、(4)答えを出すアプローチの見極め、(5)分析的に答えを出す、(6)統合といったものはAIにはできない。つまり、知的生産の多くの過程は当面人間の仕事として残る、とも記述しています。

AI全盛の時代になるからこそ、人間には「思考」することがますます求められるのだと思います。

安宅氏によれば、思考とはインプットをアウトプットにつなげることであり、情報を知覚(感覚)し、理解し、統合し、判断し、実行につなげることです。

情報収集や分析の量と質を上げるためにはAIは活用できますが、正しい課題解決に結びつけるのは人間の知性です。
また、情報収集はAIがやるからといって、知識は必要ないかというと、そうではないと安宅氏は言います。

いちいち必要な情報を脳にアップロードしなければならない人では適切な判断は難しい。どれほどAIが発達して知識や判断をサポートしてくれるようになっても、過去の先人がつくり上げてきた知的体系を学ぶことの必要性は変わらない。知的体系の理解なしには、その場で起きている問題を総合的に見立て、把握し、判断することができない、と言います。

学習指導要領の改訂や高大接続改革の議論の中で、思考力・判断力・表現力等を重視する傾向に対し、「知識は必要ないのか」という反論を述べる方がたくさんいます。安宅氏の論を見れば、ビジネスの現場にいる方から見ても、知識は必要だということです。

その通りだと私も思います。決して知識が不要になるわけではありません。しかし、子どもたちの学ぶ機会や時間は有限です。思考力等の汎用的な資質・能力を身に付けるための学習を行うためには、これまでのやり方では無理です。細かい知識はAIに任せておけるので、メタレベルでの知識や思考や判断に活用できる形で身に付ける知識を重視することが大切なのではないでしょうか。

この手の議論が抽象論では済まないことは私も認識しています。アクティブ・ラーニングをより実践的にするためには避けて通れないポイントです。
AI時代の人間の知性とは。そして、それを身に付けるために学校で学ぶことは何か。
これからも、より具体的に考えていきたいと思います。

大学入学希望者学力評価テストの原案速報

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

これまでもブログに書いてきましたが、現在検討中の高大接続改革の一環として、2021年度入試から大学入試システムが変わります。その変更のポイントの1つが、センター試験の代わりに行われることになる「大学入学希望者学力評価テスト」です。

正式な実施方針は文科省から6月に発表されるとのことですが、今回、その一部が分かったとの報道がありました。

今回の報道を見ると、これまで検討段階で発表されていた内容とあまり変わりませんが、英語においては、4技能を評価する問題を大学入試センターで作成するのか、民間の検討試験等を活用するのかで検討していましたが、民間の試験の活用で決定したようです。国語の記述式問題は、採点を大学入試センターで行う、大学で行う、という案が出ていましたが、結局は民間業者に委託するということになったようです。

以下、4月14日の朝日新聞の記事を転載します。

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大学入試センター試験に代わって2020年度から導入される新テスト「大学入学希望者学力評価テスト」の原案が13日、わかった。英語では、英検のような民間試験を事前に受けさせ、聞く・読む・書く・話すの4技能を評価。受験生は2回まで受けられ、結果の良い方を採る。国語の記述式はセンターが民間業者に採点を委託し、80〜120字程度で答える問題などを数問出題する。

新テストは、現役であれば21年4月に入学する今の中学3年から対象になる。文部科学省は近く原案を示し、大学、高校側と協議したうえで、6月に実施方針として公表する。出題科目は国語や数学Ⅰ、世界史A、物理など30科目で、24年度以降は絞る。

高校の学習指導要領は英語の4技能の育成を求めている。だが、マークシート式のセンター試験では聞く・読むしか測れないため、文科省はすでに大学の推薦入試などに使われている英検やTOEIC、TOEFLのような民間試験の活用を決めた。大学入試センターが試験の内容や実施態勢が必要な水準を満たしている団体を認定する。民間試験の内容はビジネスや留学を想定したものもあり、学習指導要領に沿った問題になっているか確認する。

受験生の成績はセンターが管理し、出願先の大学に成績を提供する方式を軸にする。成績は点数ではなく、CEFR(欧州言語共通参照枠)という国際基準に対応した段階別とし、6段階表示などを検討。各大学が2次試験の出願資格や試験免除、得点の加算に使うことを想定する。

また、経済的な負担や離島・へき地の受験生などを考慮し、受験回数は高3の4〜12月に2回までとする。浪人生については別に検討する。いまのセンター試験の2技能の試験は23年度まで併存させ、その後は廃止する方向だ。

新テストでは「記述式」の導入も大きな柱となる。文科省はこれまで、国語で①80字以内の短文形式②より字数が多い形式――の2種類を課すことを検討してきたが、大学に採点の負担がある②は利用が広がらないと判断。センターが民間業者に採点を委託する方式に統一した。

そのうえで、記述式のための大問を設け、80〜120字程度の問題を含めて3問程度を出題することを検討。試験時間はいまの80分から100分程度に延ばし、結果は段階別で示すことを想定している。例えば、アパートの賃貸契約書を読ませて懸念される点を問うたり、自治体の街並み保存策について、長所と短所を説明させたりするような問題を検討している。

記述式は数学にも導入。図表を用いて考えたことを数式などで表す問題を3問程度出題し、試験時間は10分増やして70分程度を想定している。新指導要領に基づくテストとなる24年度以降は、地理歴史や公民、理科でも記述式の導入を検討する。(水沢健一、編集委員・氏岡真弓)

大学入試センター試験に代わる新テスト「大学入学希望者学力評価テスト」の骨子
・2020年度(21年4月入学者)から毎年1月中旬に実施

《英語》
・民間の試験を活用。「聞く・読む・書く・話す」を評価
・高3の4〜12月に2回まで受けられ、結果の良い方を採用(浪人生は別途検討)
・成績は点数ではなく、複数段階(6段階を検討)で表示
・成績のデータは大学入試センターが管理し、大学に提供
・低所得世帯への受験料割引、障害者への配慮などを求める
・センターが作成する「聞く・読む」の試験は23年度まで継続

《国語》
・記述式の採点はセンターが民間業者に委託
・記述式は80〜120字程度で答える問題を含め3問程度
・試験時間はマークシート式と記述式合わせて現行の80分から100分程度に

《数学》
・大問の中にマークシート式と記述式が混在する形で3問程度
・試験時間はマークシート式・記述式合わせて70分程度
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まあ、現実的なところに落ち着いたという感じですが、高校生たちにとっては、英語の4技能をバランスよく身に付けておくこと、国語では記述力を身に付けておくことの大切さは変わらないでしょう。

大学卒のマグロくんは優秀でした

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

先日、大阪グランフロントにある飲食店で、マグロの刺身を食べました。

このマグロ、なんと大学卒。最近は大卒のアイドルや芸人は珍しくありませんが、お魚となると珍しいですよね。

というのも、この飲食店の名前は「近畿大学水産研究所」。近畿大学の水産研究所で養殖したマグロを食べさせてくれるお店なのです。近大で育ったので「大卒」というわけです。

以前から噂になっていたので、一度食べてみたいと思っていたのですが、それが叶い、先日お邪魔してきました。養殖だから味はイマイチなのかなと思っていましたが、なんのその。中トロには脂がのっていて、とても美味しかったです。
さすが大卒。優秀です。

マグロの養殖は世界でも珍しい技術だそうです。近大が長年の研究を経て、2002年に完全養殖に成功しました。

この水産研究所は、和歌山県串本に1948年に設立されました。当初から魚の養殖を研究していたのですが、失敗の連続で、1965年にやっとヒラメの養殖に成功しました。その後、ブリやシマアジなどの養殖も成功し、1970年代に当時は不可能と言われていたマグロの養殖にチャレンジし始めます。
それから30年。マグロの養殖の研究は困難を極めましたが、やっと近大の生簀(いけす)で生まれ育ったマグロが産卵するという完全養殖に成功しました。

そして、2013年4月に大阪に養殖マグロを食べさせるお店を出店。その頃から近大の広報戦略が積極化しており、「近大マグロ」も広報の一アイテムに。富士山からマグロが噴火しているようなビジュアルで、「固定概念を、ぶっ壊す」というキャッチコピーのポスターが登場しました。とてもインパクトがあり(マグロだけにギョッとする?)、近大のイメージ転換に一役買ったと思います。

今では、大学入試の志願者数が全国で一二を争うようになった近畿大学。研究の力もすごいですが、それをビジネスや広報に十二分に使いこなすしたたかさも大したものです。

他の私学も見習うところがたくさんありそうです。

いやー、もう一度、紀州のお酒と近大マグロを愉しみにいきたいですねー。

カトリック学校におけるグローバル教育

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

本日、鎌倉にあるカトリック雪ノ下教会の聖堂で「第2回カトリック学校で学ぶ魅力」というイベントが開催されました。湘南地区にあるカトリック系の私立小中高校がカトリック学校の魅力を伝えるために開催したイベントです。

今年のテーマは「カトリック学校とグローバル教育」でした。前半は、湘南白百合学園小学校、清泉小学校、栄光学園中学高等学校、湘南白百合学園中学・高等学校、清泉女学院中学高等学校、聖園女学院中学校・高等学校の6校の学校紹介がありました。

今回の学校紹介の良かったところは、学校の理念や教育目標などの抽象的な話ではなく、実際に取り組んでいる授業や教育の事例を紹介していただき、聞いている方が具体的にイメージができた点です。1校10分ずつでしたが、とても良く学校の考え方やスタンスが伝わってきました。
最後に登場した聖園女学院は、生徒4名が登壇し、授業の中で学んだことをパワーポイントを使ってプレゼンしていました。宗教系の学校にしかできない奥の深い話で、とても感動しました。

イベントの後半は、上智大学神学部教授の瀬本正之神父による45分間の講演。タイトルは「カトリック学校とグローバル教育」でした。

登壇するなり、「自分は上智大学の中でもグローバル教育を語るには不適切な人選」といって笑いを誘いました。瀬本先生は、現在、グローバルに活躍するには英語が必須だが、それがグローバル教育とイコールではないと言います。グローバル教育とは人間であることに責任を持つことが大事だと教えることであると語りました。人には基本的な関係が4つある。神との関係、自分自身との関係、自然との関係、人との関係だ。それぞれの関係において和解することが課題であり、そうして神からいただいた自分という存在を大切にすることが大事なことだと、瀬本先生は教えます。

私はキリスト教には不案内なので本質は理解できていないかもしれませんが、私の理解では、自分との対話を通じた自己認識、自己肯定感を前提として、多様な人や自然と共に生きることを学ぶことがグローバル教育なのだと教えていただいたと思っています。

それは、瀬本先生の話からだけではなく、6校の先生や生徒たちが語った教育実践の中からも伝わってきたことです。

今日はカトリック学校にとってのグローバル教育について再認識させていただく良い機会となりました。忙しい時期にイベントを企画し準備なさった先生方に感謝申し上げます。


会場となった雪ノ下教会は、鶴岡八幡宮に続く若宮大路の段葛の直ぐ傍にあります。

次期学習指導要領案に込められた思い

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

文部科学省は、本日、幼小中学校の次期学習指導要領の案を公表し、パブリックコメントに付しました。
次期学習指導要領は、小学校は2020年度、中学校は2021年度から実施される予定です。

とり急ぎ、中学校の学習指導要領案にざっと目を通してみました。

今回の改訂では、初めて「前文」が設けられ、「これからの時代に求められる教育を実現していくためには、(中略)社会に開かれた教育課程の実現が重要となる」との記述がされました。
また、「総則」の中には、「主体的・対話的で深い学び」「カリキュラム・マネジメント」などの言葉が登場し、中教審の答申における改訂のポイントはほぼ盛り込まれていると思われます。

「主体的・対話的で深い学び」については、「生徒が各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう学習の過程を重視すること」という説明があり、カタカナの言葉は使わなかったもののアクティブ・ラーニングの推進を指示するものになっています。

各教科の章の中でも、「生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること」という記述があり、アクティブ・ラーニングを重視していることが読み取れます。

また、身につける資質・能力を(1)知識及び技能、(2)思考力、判断力、表現力等、(3)学びに向かう力、人間性等と3つに分類していますが、中でも思考力、判断力、表現力を重視していることが分かります。
例えば「国語」の中には、「[知識及び技能]に示す事項については、[思考力、判断力、表現力等]に示す事項の指導を通して指導することを基本とし、必要に応じて、特定の事項だけを取り上げて指導したり、それらをまとめて指導したりするなど、指導の効果を高めるよう工夫すること」と記述されており、[知識及び技能]だけを指導することは例外的で、[思考力、判断力、表現力等]の指導を通して指導することが基本だということを示しています。

私が一番注目したのは、「学習評価の充実」という項目です。
「学習の過程や成果を評価し、指導の改善や学習意欲の向上を図り、資質・能力の育成に生かすようにすること」と書かれており、具体的な方法について興味がわきました。ポートフォリオやルーブリックなど新しい評価の方法の余地も残しており、今後も学習指導要領の検討を注視していきたいと思いました。