経営は不格好なもの

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

「それにしても、マッキンゼーコンサルタントとして経営者にアドバイスをしていた自分が、これほどすったもんだの苦労をするとは・・・。」

まえがきにこう書かれて始まるこの本の著者は、ディー・エヌ・エー(DeNA)前社長の南場智子さんです。外資系のトップ経営コンサルティング会社であるマッキンゼーでパートナー(共同経営者)まで務めた南場さんは、1999年にベンチャー企業DeNAを立ち上げました。今ではモバゲーやベイスターズで有名なDeNAですが、設立当初は色々な苦労もあったようです。「不格好経営」と題されたこの著書は、DeNAというベンチャー企業がどう発展してきたのかという経営の過程を知ることも出来ますが、それよりも、南場さんという一人の経営者の考えがとてもためになる本です。
特に、私にとっては、コンサルタントから経営者(事業リーダー)になった彼女の苦心する姿がとても参考になりました。

「いざ自分が事業リーダーになった途端、新しく身につけなければならないこと、そして「unlearning(学習消去)」しなければならないことがとても多く、本当に苦労した。」
コンサルタントと経営者の違いに戸惑った様子が書かれています。そして、その一番の違いは、
「私が何に苦労したか。まず、物事を提案する立場から決める立場への転換に苦労した。」
と彼女がいうように、コンサルタントはいくら良いアイデアを考え出したとしても、それはあくまでも提案する立場であり、経営者には「決める」という大変な仕事があることに気づいたというわけです。

コンサルタントは、データや情報をもとに緻密な分析をし、正しい戦略を導きます。しかし、それを実行するかしないかを決めるのは経営者です。南場さんは、その立場に立ってみてその苦労が分かったのでしょう。

そして、経営者となった南場さんがこの「決める」ことに関して行き着いたのは、意思決定のスピードの大切さでした。
「不完全な情報に基づく迅速な意思決定が、充実した情報に基づくゆっくりとした意思決定に数段勝ることも身をもって学んだ。」

しかし、素速く意思決定するには勇気がいります。正しくない決定をしてしまったらどうしようかと。しかし、彼女は言います。
「事業リーダーにとって、『正しい選択肢を選ぶ』ことは当然重要だが、それと同等以上に『選んだ選択肢を正しくする』ということが重要となる。」

経営上の意思決定は、すべて未来のことを決めることです。つまり、誰にも何が正しいかなんて分かりません。それよりも、決めて選んだものを正しくする、つまりきちんと成果を出すまでやり遂げるということが大切なんだと思います。

学校の理事長先生、校長先生も経営者です。経営者とは格好良いものではなく、苦労も多く、大変な仕事なんだと思います。あらためて尊敬の意を表します。

「経営とは、こんなにも不格好なものなのか。だけどそのぶん、おもしろい。最高に。」(南場智子著「不格好経営」)