幸福度世界一のデンマークに学ぶ(3) 〜森の幼稚園

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

デンマークの教育に関する第3回目です。前回まではデンマークにおける教育の概要を書いてきました。今回からは、各学校段階でどのような教育を行っているかを記していきます。ここで書く内容は、今年の9月に私自身がデンマーク現地に行き、視察してきた内容です。
今回から何回かに分けて、幼稚園、小学校・学童、エフタスコーレ、高校、大学、フォルケホイスコーレの順番に紹介していきたいと思います。

まずは、幼稚園について紹介します。訪れたのは、ロラン島にある「森の幼稚園」です。森の幼稚園は、今では日本にも広がっていますが、元々はデンマーク生まれ。1952年に一人のお母さんが自分の子どもたちを森に連れて行って保育をしていたことから始まったと言われています。その後、北欧諸国やドイツに広がり、世界に伝わっていきました。ロラン島には3つの森の幼稚園がありますが、いずれも人気が高いらしいです。

森の幼稚園では、雨が降っても雪が降っても外で過ごします。その日の天候に合わせて自然の中で育てるというのがデンマークの伝統的な考え方です。
森の中には、手作りの遊具がたくさんあります。子どもたちは思い思いに好きなところで思いっきり遊び回ります。鬼ごっこのようなことをしたり、ターザン遊びをしたり、ブランコをしたりしています。

時間を区切って授業を行うようなことはありません。先生(保育士)は、自分で何かを作っています。そうすると、子どもたちが自然と集まってきて、先生と一緒に何かを作り始めます。一人の先生が木彫りの像のようなものを作っていました。周りで子どもたちもノミやトンカチを使いながら木を彫ります。見るからに危なっかしいのですが、先生はあまり口出しをしません。道具の使い方を見せて指導したら、あとは自由に使わせます。彫るための木も本物、使う道具も本物。自然の中で本物に触れながら感性を養っていきます。

女の子二人が広場で木の板や輪っかを使って線路(道路?)のようなものを作って遊んでいました。相談しながら自由に作っていきます。そこへ別の子が来て、工夫を加えます。作り方で少し揉めたりしながら、みんなで作っていきます。
子どもたちが自由に活動しながら、他の子との関係や距離を測り、自分の位置づけを考え行動しています。自分を知り、相手を知り、お互い認め合う。そういうことを自然とやっているように見えます。

デンマークでは、幼児期の過ごし方がもっとも大切とされています。集団の中で身につく社会性や個性、自立心がその後の人格形成に大きく影響を及ぼすと考えています。

園長先生に話を聞いたところ、
「ここでの目的は民主主義を身につけるために必要な力を教えることです。それは、1つは自分自身の持っている価値や自分が何者かを探し出すこと、もう1つは自分と違う人の多様な意見や行動を互いに認め合うことです。これが民主主義を構成する重要な要素です。」
と語っていました。

デンマークの教育の根幹には、この「民主主義を身につける」というものがあると思います。自然の中で過ごすということは、感性を育てるということだけではなく、自由に行動するルール(=民主主義)を自然と身につけることに役立っているのだと分かりました。