大学入試改革はどうなるのか!?

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

新年あけましておめでとうございます。
今年は昨日(4日)が日曜日だったので、今日(5日)が仕事始めの方も多いのではないでしょうか。ゆっくりと休めましたか?

さて、昨年末(12月22日)、中央教育審議会は「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」という答申を行いました。
答申の内容の中心は、大学入試の改革です。まず、高校生が共通して身に着けておくべき基礎学力を定着させるため、「高校基礎学力テスト(仮称)」を新設します。科目は国語、数学など主要6教科を想定し、高校2年生から年間2回程度の受験機会を与えるということです。

また、大学で学ぶための力のうち、特に「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を新設します。このテストは、教科型に加え、教科の枠組みを超えた「合教科型」「総合型」の問題を導入します。将来的には教科型は廃止する方向とのことです。年複数回実施し、結果は現行の「1点刻み」式から複数のレベルに分けて評価する方式に改めます。回答方式は選択(マークシート)式に記述式を加えるということです。英語については、「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能を測るよう、「TOEFL」など民間が実施する試験の活用を提言しています。

これにより、1990年に共通一次試験から受け継いで始まった大学入試センター試験は廃止されることになり、大学入試方式の大きな改革になるというわけです。
「高校基礎学力テスト(仮称)」は2019年度から、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は2020年度から導入されます。対象となる学年は現在の小学校6年生です。

一方、各大学の入試(いわゆる二次試験)がどう変わるかが気になりますが、答申の中では、各大学が個別に行う選抜(個別選抜)は、各大学がその特色に応じたアドミッション・ポリシー(入学者受入れ方針)で明確化すると書かれており、各大学任せなので、現状ははっきりしません。ただ、答申でも、評価方法は、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書 、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、その他受検者のこれまでの努力を証明する資料などを活用することを示唆しており、現状はこれがガイドラインになると思われます。

と、ここまでお伝えしてきた答申の内容は、昨年からセミナーなどでみなさまにお伝えしてきたことと変わりません。しかし、答申として出されていますので、この方向で進む可能性がかなり高くなりましたので、改めてお伝えした次第です。
詳しくは文科省のホームページで

合教科問題をきちんと作問できるのか、思考力・判断力・表現力を正確に試す作問ができるのか、英語テストの民間活用は何を使うかが調整できるのか、大学個別選抜は中教審が提言するような方式で本当に行うことができるのか等、私の中でもまだまだ疑問は多いのですが、答申された方向性は変わらないと思いますので、どう対処するかを前向きに考えていきたいと思います。

ここからは私の推測も入った対応策です。
まず、「高校基礎学力テスト(仮称)」は、これまでのセンター試験をさらに基礎的問題に絞って出題されるような内容だと思いますので、特にこれまでと違う対策は必要ないと思います。
次に、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の方ですが、合教科型問題は2016年度中に問題例を公表し、2017年度中に試行テストを実施すると言っていますので、それを待ってからでも対策は遅くありません。対象学年の現小6が中3になる時には問題形式が明らかになります。
ただ、中高一貫校の場合、今年の4月からその対象学年を教えるわけですから、少なくとも、「思考力・判断力・表現力」ということについて、自校なりに研究し、ふだんの授業の中でも意識してその力を身につけるようにするべきです。

最後に、各大学の個別選抜ですが、ここが一番見えていません。大胆に予測すれば、3種類に分かれるように思います。1つは、私立の中堅以下の大学ですが、「高校基礎学力テスト(仮称)」+面接・論文のような、現状のAO入試に基礎学力テストを課すような選抜になっていくのではないかと思います。
私立の上位大学や国立大学は、2つの種類を組み合わせるのではないと思います。1つは、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」+「TOEFL」+面接・論文のようなAO型。ここでは、高校での成績や課外での目覚しい活躍などを問うような米国大学型の選抜を行う大学も出てくると思います。大学のグローバル化も課題となっており、米国型に合わせる方向性をとる大学が出てもおかしくないでしょう。実際、中教審の高大接続部会の議論の中では、ハーバード大学などの入試選抜の事例を研究していたりもしました。

もう1つの方式としては、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」+二次試験としてのペーパーテスト。AO型の入試は手間も時間もかかりますので、受験生が多い大学では全てをその方式で選抜するのは物理的に難しいと思います。従って、結果的にペーパーテストでの選抜は不可避だと思います。ただし、現状よりも、思考力や表現力、つまり、考えて記述させる問題が増えると思います。記述式の採点の手間を軽くするために、合教科型の問題(地歴+国語の論文形式など)もあり得ると思います。
答申で示された方式のうち、集団討論、プレゼンテーションなどは個人的には面白いと思いますが、手間もかかりますし、方式が確立されるには時間がかかると思いますので、当初は、一部の大学が特色入試的に取り入れるにとどまると思います。

と、勝手な予測を書きましたが、みなさんの学校でも情報を収集して、自校なりの予測を立て、授業の中に取り入れるといいと思います。
もちろん、中学校や高校の教育は大学入試のためにやっているわけではありません。しかし、多くの生徒や保護者が大学進学を希望していることは否めません。建学の精神、教育理念の実現とともに、希望の大学進学を叶える学校になってほしいと思います。

新年から長々と書きましたが、今年もよろしくお願い申し上げます。