カーンアカデミーが教育界に与える影響

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

「カーンアカデミー」は、いま世界でもっとも注目を集めているオンライン教育プラットフォームです。
米国のヘッジファンドのアナリストだったサルマン・カーンさんが、個人的に従姉妹の家庭教師を引き受けたことがきっかけとなり始まったカーンアカデミーは、現在、月530万人が利用するオンライン教育サイトに成長しました。

その創設者であるカーンさんの著書が、このたび翻訳されました。タイトルは「世界はひとつの教室」。読む前は、ベンチャー創業者がその半生を綴った伝記のようなものだろうと思って手に取りましたが、意外や意外、現在の学校教育のあり方に対して問題提起してくれる面白い本でした。また、彼の発想は様々な理論に裏打ちされており、なかなか考えさせられる一冊です。

彼の問題意識は、以下のようなものです。

なぜ、子どもの集中力は10〜15分しか持たないのに、授業は1時間なのか?
なぜ、子どもが完全に理解していないのに、次の単元に進んでしまうのか?
なぜ、夏休みは1ヶ月間、子どもに勉強をさせないのか?
なぜ、学年でクラスを区切ってしまうのか?
なぜ、理解のスピードや興味が異なる生徒を同じ一斉授業で学ばせるのか?

現在、米国でも日本でも取り入れられている学校教育のスタイルは、プロイセン・モデルと言われ、最低限の知識を多くの人たちに均一に行き届かせることを目的としたものなのです。
時代が変わり、社会環境が変化する中で、この学校教育モデルに限界が来ていると彼は言います。

そして、オンライン授業というテクノロジーによってその限界を突破できると言います。

彼の答えはこうです。
全教科で1本10分程度のビデオ教材を作る。生徒はそれを使い理解に合わせたペースで学んでいく。学校では、生徒同士、生徒と教師がもっとインタラクティブに取り組む授業を実施し、独創性や発想力を育んでいく、というものです。

私はオンライン教育が万能だとは思いません。しかし、従来の教育システムの問題点や制約をICT技術によってどれだけ解決することができるのか、という点については非常に興味があります。
カーンアカデミーは教育界のイノベーションへの壮大なチャレンジです。その動向は注視していきたいと思います。
そして、この本に書いてあるような学校教育の未来について、真剣に考えていきたいと思います。