アクティブ・ラーニングを理解するためのおすすめの10冊

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

昨年の秋以降、アクティブ・ラーニングに関する書籍もだいぶ出版されています。
私のおすすめの書籍を紹介します。

■理論編
(1)溝上慎一著「アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換」(2014年10月、東信堂
京都大学高等教育研究開発推進センター教授の溝上慎一先生の著書です。大学教育におけるアクティブラーニングに関する理論を分かりやすく解説してくれています。基本的には大学の話ですが、中等教育においても、アクティブラーニングとは何かという概念の整理としては有効だと思います。まずは必読の一冊と言えるでしょう。

(2)松下佳代編著「ディープ・アクティブラーニング」(2015年1月、勁草書房
溝上先生の先輩にあたる同じ京都大学の松下佳代先生の編著書です。こちらも基本的に大学の話ですが、学習形態に重点を置きがちなアクティブラーニングに対して、学習の質や内容を問うディープラーニングが必要なのだという主張がとてもいいです。松下先生が書かれている「外的活動の能動性と内的活動の能動性」という概念は、私も時々引用させていただいています。

■実践編
(3)小林昭文著「アクティブラーニング入門」(2015年4月、産業能率大学出版部)
高校におけるアクティブラーニングの先駆的書籍です。小林先生は、元埼玉県立高校の教師で現在産業能率大学の教授をされています。小林先生が長年実践されてきた高校物理の授業をベースにアクティブラーニングの意義や実践方法について詳しく解説しています。
アクティブラーニングの1つの実践例として多くの示唆に富みます。私は敬意を表して「小林メソッド」と呼んでいますが、まさに入門書として読んでいただければ、とても参考になると思います。

(4)アクティブラーニング実践プロジェクト編著「アクティブラーニング実践」(2015年8月、産業能率大学出版部)
小林昭文先生を中心として高校現場の先生方が共同で執筆された本です。全国32人の教師によるアクティブラーニング型授業の実践レポートが入っています。指導案まで掲載されていますので、実際にアクティブラーニング型授業をやってみようという先生には参考になると思います。

(5)河合塾編「今日から始めるアクティブラーニング」(2015年9月、学事出版)
小林昭文先生第3弾で、河合塾の成田秀夫先生と一緒に行った講演会を書籍化したものです。「高校授業における導入・実践・協働の手引き」という副題通り、事例も豊富で実践的に役に立つ1冊だと思います。

(6)西川純著「すぐわかる!できる!アクティブ・ラーニング」(2015年8月、学陽書房
上越教育大学教授の西川純先生の著書です。西川純先生は、以前から『学び合い』授業を提唱してきており、これが今にわかに注目されるようになったアクティブ・ラーニングの1手法として有効だという認識からアクティブ・ラーニングをタイトルに入れて発行したものだと思われます。ほかに「アクティブ・ラーニング入門」(2015年8月、明治図書)という著書もありますが、基本的には『学び合い』の紹介本だと思ってください。

(7)田代直幸他編著「中学理科9つの視点でアクティブ・ラーニング」(2015年8月、東洋館出版社
中学理科のアクティブ・ラーニング型授業の実践を詳細に紹介する本です。中1から中3まで20の授業事例を紹介しています。私が面白いと思ったのは、アクティブ・ラーニングを取り入れる視点を9つに整理して紹介している点です。「感想」「テスト」「話し合い」など授業で使える具体的示唆に富んでいます。

(8)関西大学初等部著「思考ツール(関大初等部式思考力育成法実践編)」(2013年2月、さくら社)
アクティブ・ラーニングという言葉は出てきませんが、アクティブ・ラーニングの1つの目的が思考力を育成することにあるとすると、そこに特化した授業メソッドとしてとても興味深いです。思考ツールとは、「比較する」「分類する」「関連づける」などの思考スキルを目に見える形にする図形の枠組みです。それを使った授業実践を紹介しています。実際に関西大学初等部で実践されている授業ですので、具体的かつ説得力もあります。

■関連編
(9)P.グリフィン他著「21世紀型スキル」(2014年4月、北大路書房
いまアクティブ・ラーニングが求められているのは、世の中で求められる力が変化しているからです。「21世紀型スキル」はいまグローバルに求められている力を表している最も代表的な概念です。欧米の大企業がスポンサーとなり各国の大学の研究者が共同で研究して21世紀に求められる力を定義しました。いまなぜアクティブ・ラーニングが必要なのかを理解するためには必読の1冊です。

(10)安彦忠彦著「コンピテンシー・ベースを超える授業づくり」(2014年12月、図書文化社)
21世紀型スキルと並んで、いまグローバルに必要な力を表しているのが「コンピテンシー」です。OECDの「キー・コンピテンシー」は、PISA調査の考え方のベースにもなっており、世界の教育の潮流とも言えるでしょう。コンピテンシーは「遂行能力」などと訳されますが、要は「何を知っているか」ではなく「何ができるか」を重視する能力観です。その意味では、アクティブ・ラーニングと通ずるところもあり、参考になるところが大きいと思います。

以上、私が勝手に選んだアクティブ・ラーニングを理解するためのおすすめの10冊をご紹介しました。まぁ、私のレビューはさて置き、本を実際に手にとってみてはいかがでしょうか。