歴史と自然豊かな環境に囲まれて――啓明学園

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

先日、東京都昭島市にある東京都指定有形文化財「旧三井家拝島別邸」と「伏見庭園」の紅葉を見てきました。旧三井家別邸は、元々佐賀鍋島藩下屋敷があった場所(永田町)に鍋島侯爵が明治25年に建築した和風邸宅でした。当時、鹿鳴館に代表されるように、洋館が多く建設されましたが、鍋島邸は、和洋並置式と言われるような和館と洋館が同じ敷地内に建てられるようなお屋敷でした。


移築、増築はされているものの、基本は100年以上前に建てられた和館です。

大正12年関東大震災で洋館の方は倒壊してしまったのですが、この和館はほとんど被害を受けずに残りました。震災後、三井家当主である三井八郎右衛門氏がこの和館を買い受け、昭和2年に三井家の別荘として、現在地の拝島に移築しました。


別邸2階から庭園を見ていると、財閥の御曹司気分です。

と書いていると、単なる観光地のように見えるかもしれませんが、実はこの建物は、「啓明学園」という学校の敷地内に建っているのです。
啓明学園は、昭和15年に、三井八郎右衛門の次男である三井高維によって、帰国子女教育を目的とした学校として港区に創立されました。啓明学園の生徒たちは、戦争中この拝島に疎開をしていたのですが、終戦後、三井家別邸の敷地を転用する形で、学園全体がこの地に完全に移転をしました。
こうして、三井家別邸の建物は、啓明学園北泉寮となり、文化財として保存しながらも、教育施設として利用され続けているのです。

敷地面積3万坪という啓明学園の校地内には、幼稚園・小学校・中学校・高等学校の校舎や体育館・グラウンドなどがあるのですが、一方で、この北泉寮や庭園のエリアがあります。庭園は、以前は枯山水などもあったらしいですが、現在は自然な林のようになっています。訪れた日は秋。モミジやケヤキなどが赤色や茶色に庭園内を染めていました。


秋真っ盛り。とてもきれいな紅葉が楽しめました。

小学生の子どもたちは、休み時間に、そんな歴史ある建物や庭園内で、走り回り、池でカエルをつかまえたり、木登りをしたりと自由に遊んでいました。

啓明学園は、先述した通り、帰国子女教育を目的として設立された学校で、現在でも多くの帰国子女が通っていますが、大半は帰国子女ではない一般の生徒だそうです。それでも、英語教育や国際教育には定評があり、いま流行りのグローバル教育の先駆けのような学校です。
都心からは少し離れていますが、その分、広大な敷地と自然環境の豊かさがあり、歴史的雰囲気にも触れることができる最高の学習環境。一見の価値ありです。私のように観光気分半分で学校を訪れてみたらいかがでしょうか。


啓明学園は、JR青梅線西武拝島線拝島駅からスクールバスで6分のところにあります。新宿から拝島まで特快で38分。以外と近い。

今年からリベラルアーツ・アイランドも始動。常に進化する山脇学園中学校・高等学校

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

8月27日に、山脇学園中学校・高等学校の「夏休み学校説明会」を見学させていただきました。学校説明会というタイトルになっていますが、実際にはオープンキャンパス形式で、授業を見学できたり、クラブ活動を体験できたりと、充実した内容のイベントでした。かなり多くの受験生が参加していましたが、みなさん満足してお帰りになったのではないかと思います。

山脇学園といえば、古い方は、みんな三つ編みの髪型をしていて礼儀や生活指導が厳しい真面目な伝統女子校のイメージが強いと思いますが、それは昔の話。近年は、「山脇ルネサンス」と称する学校改革で、学力向上に力を入れ、新しいことにも次々とチャレンジするエネルギーのある学校へとイメージも一新しています。
その代表格が、「サイエンス・アイランド(SI)」「イングリッシュ・アイランド(EI)」と名付けられた理科専門棟、英語専門棟の教室群です。

EIには、カフェ、フラワーショップ、薬局、銀行など英国の街並みを模したスペースがあり、ネイティブスピーカーの英語教員がホストとして常駐しており、ここでは日本語禁止。すべて英語でコミュニケーションが行われます。放課後は生徒に開放されていて、カフェでの自由英会話、ネイティブによる各種英語講座、シアターでの映画鑑賞などが毎日実施されているそうです。
帰国生の生徒の話を聞きましたが、この施設を見て、山脇学園への入学を決めたという人も多いようです。

今年度からは、SI、EIに続いて「リベラルアーツ・アイランド(LI)」も完成し、国語科や社会科のアクティブ・ラーニング授業が行われているそうです。

常に新しいことに挑戦している山脇学園。説明会に参加していても何だか期待感でワクワクしてきます。伝統女子校の改革の一つの成功例を肌で感じることができ、とても貴重な体験をさせていただきました。

熊本の復興を願って

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

先日、熊本を訪れました。震災の復興支援として、ルーテル学院中学・高等学校にタブレット端末を寄贈しました。その贈呈式を学校で行ったのです。


タブレット寄贈の模様は熊本日日新聞に掲載されました(2016年6月30日朝刊)。
後列中央が林田博文校長、左が鶴山克郎教務部長、
前列右が元生徒会長の濱田麻里さん(高3)、左が現生徒会長の諌山桜花さん(高2)

この学校では、4月の大地震で甚大な被害がありました。築90年の歴史的建造物である校舎は、耐震補強工事をしてあるので、倒壊することはありませんでしたが、木製の天井が崩落したり、煙突が倒れたりと大きな被害がありました。修繕工事は急ピッチで進められており、もう直ぐ元のように利用できるようになるとのことです。


訪問した時はまだ校舎は工事中だった。
大きな地震は2回とも夜に起きたので、幸い生徒には被害はありませんでした。校長先生は、そのことだけが救いだったと言います。自宅が被害に遭った生徒は30人近くに上るとのこと。早く元の生活に戻れることを祈っています。

いくら自然災害で仕方がないとはいえ、子どもたちの学びは止めることができません。この学校では、新たな時代に向けたICT活用教育を手がけようとした矢先にこのような被害に遭ってしまいました。私たちの支援で少しでも前向きに学び進めるようになることを祈念してやみません。


熊本城の被害はニュースでは聞いていましたが、実際に見るとかなりひどい状況です。

リベラルアーツ教育の新たなる挑戦

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

日本におけるリベラルアーツ教育というと、東京大学教養学部国際基督教大学がその代表でしょう。リベラルアーツという言葉は、一般には、大学において、専門分野に絞るのではなく幅広い分野を学ぶという意味で使われます。

日本の大学では、以前は、1〜2年生を教養課程、3〜4年生を専門課程というように区分し、1〜2年生のときには幅広い分野を学ぶというようになっていましたが、1991年の大学設置基準の大綱化により、その縛りはなくなり、いまは教養課程・専門課程という区分はほとんど見られなくなりました。
その代わり、近年、「国際教養」という名のリベラルアーツ大学(学部)が増えています。早稲田大学国際教養学部上智大学国際教養学部などがその例です。秋田の国際教養大学もその代表といえるでしょう。

リベラルアーツという言葉は、古代ローマの「アルテス・リベラレス(artes liberales)」が語源と言われています。ローマ時代の後期には、人が持つべき技芸として「自由七科」(文法学・修辞学・論理学・算術・幾何学天文学・音楽)が定義されていたそうです。
リベラルアーツの「アーツ」は「アート」のことですが、日本でアートというと「芸術」を指しますが、欧米では少し捉え方が違います。欧米の学問体系は「サイエンス」と「アート」に分かれています。「サイエンス」は神が作ったもの(自然に起こること)を対象にしており、自然科学と社会科学に分かれます。一方、「アート」は、人が作ったものを対象にしています。美術や音楽は人がつくったものですよね。だからアートです。でも、人が作ったものということでいうと、哲学や論理学、数学、法学なんかもアートの区分に入るのでしょうね。だから、かなり広い分野の学問がアートの中に入ります。

幅広いことを学んで「人を自由にする学問」という意味で「リベラルアーツ」があるわけですが、現在では、アートだけではなく、専門分野を超えて幅広く学ぶことをリベラルアーツと呼ぶようになっています。

アメリカには有名なリベラルアーツ・カレッジがたくさんあります。アマースト・カレッジ、スワスモア・カレッジ、ウィリアムズ・カレッジなどはハーバード大学よりも人気が高いぐらいらしいです。このようなリベラルアーツ・カレッジを卒業して、専門分野を学ぶ大学や大学院に進学するのがメジャーな進路のようです。日本のリベラルアーツ大学では、卒業後に就職する人が圧倒的なので、そういう意味ではアメリカのリベラルアーツ教育とは異なっているようです。

そこで、新たにアメリカ式のリベラルアーツ型教育にチャレンジする大学が生まれました。山梨学院大学国際リベラルアーツ学部(通称、iCLA)です。
iCLAは、2年前に開設されたまだ新しい学部です。オリンピック代表選手も輩出するスポーツの殿堂ともいえる山梨学院大学がなぜ今リベラルアーツ教育を始めたのか。先日、マイケル・ラクトリン学部長、須賀等副学部長にお話を伺ってきました。

iCLAには、秋田の国際教養大学(AIU)を経験した教授が多くいるそうです。AIUを超える本格的なリベラルアーツの大学を日本に作りたいとのことで、新学部として設置されました。もちろん、授業はAll English、1年間の海外留学必修、1年生は必ず国際寮に入寮、とAIUでやっていることは網羅し、さらに本格的なリベラルアーツ教育を行う(AIUは本当の意味でのリベラルアーツではないと喝破)ことで、他の大学と一線を画そうとしています。


教室や教授の研究室は全面ガラス張り。学生と教授のコミュニケーションが円滑になる。

ラクトリン学部長によると、リベラルアーツ教育を通じて「CCIG」を育てるということですが、創造的(Creative)、批判的(Critical)、自立的(Independent)、グローバル(Global)な思考力を育てるという意味だそうです。


カフェテリアの横には竹を配した和風な空間。グローバルだからこそ、あえて日本風のものを多く取り入れている。

幅広い学問分野に触れることで、本当に自分がやりたいことを見つけるのがリベラルアーツ教育の神髄です。そういう意味では卒業後の進路が重要です。また、社会変化が激しく、学生時代に身につけた専門性だけで一生働き続けられない世の中だからこそ、幅広い教養のベースが大切になります。そのベースの上に、いつでも専門性を載せられるようになっているとキャリアを考える際にも強いでしょう。

このような新たな挑戦も始まっていますが、日本における本当のリベラルアーツ教育が定着するかどうかは、これからだと思います。日本の大学のグローバル化もこのあたりが勝負どころかもしれません。

日本マイクロソフト社との共催セミナー開催

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

昨日、コアネット教育総合研究所と日本マイクロソフトの共催で、学校のICT担当者向けセミナー「学びの進化を加速させるMicrosoftの最新ソリューションを体感しよう!」を開催しました。

世界最大のソフトウェアメーカーであるマイクロソフトが近年、教育分野へ積極的に展開しています。私も、Office365といえば、wordやexcelなどのビジネスソフトだと思っていましたが、いまや様々なソフトウェアを統合し、教育機関でも有意義に使えるソフトウェアになっています。

昨日のセミナーでは、実際に一人一台のSurface3を使い、ハンズオンでOffice365の機能を教育分野で活用する方法の体験となりました。

OneNoteには、「OneNote Class Notebook」という教育機関のみで使えるオンラインアプリがあります。これを使えば、教師と生徒、生徒と生徒で画像やファイルを共有することができます。授業において、教師から生徒への教材配布や生徒同士の共同作業に活用できます。
Swayというソフトを使えば、PowerPointよりも簡単にプレゼンテーション資料を作成することができます。生徒の調べ学習の発表用には大いに活用できそうです。
PowerPointにアドインできるツール「Mix」を使えば、PowerPointのスライドと自分を映した動画を同画面上にミックスすることができ、反転授業などで活用できる授業動画を簡単に作成することができます。Mixは最近、日本語版が出来たばかりで、まだホヤホヤのツールだそうです。

このように、Office365の機能を使うだけで、ICTを活用した教育の幅はとても広がります。もちろん、教育利用専門のソフトやアプリもたくさんあります。「ICTは難しい」とか「ICTなんて役に立たない」と、敬遠したり毛嫌いしないで、ぜひ教育へのICT活用に目を向けてみてください。上手く活用すれば、授業も家庭学習も学校生活も、何倍にも可能性が広がると思います!

素晴らしき九州国立博物館

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

少し前のことになりますが、講演で福岡を訪れた際に、九州国立博物館を訪ねました。九州国立博物館太宰府天満宮のすぐ隣にあります。実は、博物館を目指して行ったというよりは、大宰府参拝のついでに寄ってみたというだけだったのです。
ところが訪れてみてびっくり。想像を超える、とても素晴らしい博物館でした。

私が訪れた昨年11月には、ちょうど「美の国日本展」という特別展を開催していました。縄文時代から鎌倉時代までの日本の美術品を展示する企画です。火焔型土器、遮光器土偶、袈裟襷文銅鐸などの縄文・弥生時代の遺跡発掘物から、沢千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃や重源上人坐像などの平安・鎌倉の美術品、仏像まで、重要文化財や国宝がずらり。全国の博物館からこのために集められたものばかりです。

私が感動したポイントを3つ挙げると以下の通りです。
1)日本の歴史に沿った分かりやすいストーリーの展示構成
2)歴史の教科書などでも見たことがあるような有名な作品の豊富さ
3)展示の方法、光の当て方、パネルの設置などの工夫

分かりやすい展示の構成もさることながら、有名な作品を全国の博物館や寺院などから借り出してくるのは、交渉や運搬も含め大変なことだと思います。この博物館の学芸員の方々のご努力に頭が下がります。
そして、もっと感動したのは、見る人のことを考えた展示の工夫です。立体的な作品については、360度見られるように、四方透明のケースに入れて展示してあります。私はそれほどマニアではないですが、仏像などは裏からじっくり見ているような方もいますよね。普段見られない方向から見ると新たな発見もあります。

また、説明用のパネルの配置も工夫されています。通常、作品の前に小さなパネルがあるだけだと思いますが、ここではもう1か所、少し離れた壁に大きなパネルが貼ってあります。混んでいる時などは、作品の前でずっと立ち止まられると混雑が増すので、作品を見る前にパネルを見ておくということができます。ちょっとした工夫で、ストレスを感じずに鑑賞ができますよね。

そして、一番感動したのは、光の当て方です。専門的にはよく分からないのですが、素人目に見ても、一つひとつの作品をとても美しく見せるライティングなのです。造形によって陰影ができると思いますが、そのコントラストやバランスがとても絶妙です。

見学をしていて不思議に感じたことが1つありました。それは、バランスがあまりよくなさそうなものをふつうに置いてあることです。通常なら、ワイヤーで吊ったり、金具で止めたりしてあると思うのですが、それがありません。地震が来たら倒れて壊れちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしてしまいました。
後で調べてみたら、この博物館はまだ開館から10年しか経っておらず、最新の免震構造が取り入れられているとのことです。ナルホドと納得しました。

九州国立博物館は、東京、京都、奈良に次ぐ国立の博物館として2005年に建てられました。太宰府天満宮の敷地の横からエスカレーターで登って行った静かな山の上にあります。博物館とは思えないとても大きな建物で、威容を放っています。ガラス張りなのですが、ダブルスキンという二重ガラスになっていて、季節を問わず温度や湿度を一定に保ち、紫外線をカットするようになっているそうです。
この博物館は、教育普及にも力を入れていて、「学校よりも面白く、教科書よりもわかりやすい」というキャッチフレーズを掲げています。常設展は、体験型の展示も多く、「見て、触って、体感する博物館」というパンフレットに書いてあるキャッチコピーにも肯けます。

何よりも良いのは、これだけ充実した展示であっても、東京の博物館ほど混雑していないことです。同じ見るなら地方に限ります。ゆっくり落ち着いて鑑賞ができますよ。
ぜひ、福岡にお出かけの際は寄ってみてください。

中学・高校教員のためのアクティブラーニング実践講座

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

一昨日、コアネット教育総合研究所主催の「中学・高校教員のためのアクティブラーニング実践講座」が、新大阪の会場で開かれました。講師は、京都大学高等教育研究開発推進センター准教授の山田剛史先生とイノベーションファシリテーター(株式会社アンド代表取締役)の小野義直先生です。近年、アクティブラーニングの講座は数多く開かれるようになっていますが、中学・高校教員向けで、実践力の向上を目的としたものは珍しいと思います。

山田先生は、大学生の学びと成長を促す教育・学習環境のデザインと評価の研究が専門ですが、近年では、高大接続への関心の高まりから、中学・高校におけるアクティブラーニングの導入に向けた指導法等に関する講演・研修、指導・助言を行っています。
本日の講座では、中学・高校におけるアクティブラーニングを前提とした授業デザインについて、演習も交えて研修いただきました。

小野先生は、企業向けの研修講師や人材育成のコンサルティングが本業ですが、近年高校での探究学習導入プロジェクトの全体設計にも従事し、学校教育の分野でのファシリテーションの実績も豊富です。
本日は、アクティブラーニング型授業を支える教師のファシリテーションスキルについて具体的に伝えていました。

お二人とも、この講座自体がアクティブラーニングになるように工夫をしていらっしゃって、単なる座学で知識を得るだけはなく、すぐに活用できる実践力として学ぶことができたと思います。本当に5時間半の講座がとても短く感じられました。

アクティブラーニングを実践するためには、教師がティーチャー(教える立場)からファシリテーター(学習を促進する立場)に変わらなければならないと言われていますが、具体的にどうすればいいのか分からない方も多いと思います。今回の講座は知識や概念論だけではなく、具体的な手法を学ぶ良い機会になったと思います。

参加した先生方が実際の教育現場で実践されることを楽しみにしています。