【この学校の校風、特色】麻布中学校(東京都)

こんにちは。コアネット教育総合研究所松原和之です。

昨年の秋、このブログ上で不定期シリーズ化しかけた私立中高一貫校紹介ですが、聖光学院栄光学園西大和学園、灘と4校紹介したところで、その後止まっていました。
年度が替わり、また学校選びも始まる頃になりましたので、思いついたように(?)再開したいと思います。

今回は、麻布中学校です。言わずと知れた首都圏の男子御三家の一角を占める学校です。
東京都港区元麻布、地下鉄広尾駅から徒歩10分という都心でありながら閑静な立地という抜群の教育環境にある麻布学園。入学する生徒の学力は高く、授業の質も高いと思います。しかし、一方で、文化祭がチャラくて遊び人風なイメージがあるとか、7年一貫と言われるぐらい浪人が多いとか、モノを落としたら拾えないぐらい校舎が汚いとか、単なる真面目な進学校というのとは違うイメージがあるユニークな学校です。
開成が秀才のイメージなら、麻布はどちらかと言うと天才肌。私の友人にも麻布出身の人が何人かいますが、どの人も、頭はいいけど、何だか変わっているような気がします。あ、“いい意味で”変わっているということですよ。

さて、実際に学校を訪れてみた感想を含めて、特色と校風について3つにまとめてみましょう。

1) 伝統のリベラリズム
麻布中学校の学校説明会は、厳かな校歌のBGMから始まります。伝統と格式を重んじる重厚な雰囲気を感じます。
麻布では、創立者江原素六の教育理念をとても大切にしています。江原素六は、元幕臣の教育者で、官立学校への対抗もあって自由を重んじた教育理念を貫いてきました。その伝統が100年以上続き、現在に至っています。
生徒たちは自由闊達。校内に貼ってある生徒たちが書いた学校新聞には、学校に対する辛辣な批判が満載です。それを許す学校の自由な雰囲気は素晴らしいです。
麻布の校風って、血液型でいうとB型かなー。

2) 徹底的に“書かせる”教育
学校説明会に参加をすると校内を見学させてもらえますが、図書館がとても立派です。そして、図書館に陳列されている「論集」という冊子がまた凄いです。生徒たちが書いた文章を選んで年1回冊子にして発行しているのですが、その質の高さに圧倒されます。
中学3年生の国語で、3〜4人のグループによる文学作品の共同研究を行います。論集には中学生とは思えないほどの研究論文が載っています。
そして、高校1年生の社会科では、基礎課程(中1〜高1)修了論文として、生徒一人ひとりが地歴・公民の研究論文を書きます。ワープロで2〜3万字の論文を書いていますが、大学生も顔負けの論文がほとんどです。
自分で調べ、自分で考え、自分で表現する。この力を徹底的に身につけています。

3) オリジナルな授業
私立の良いところは、学習指導要領に縛られないオリジナルなカリキュラムや授業が出来るところです。麻布でもオリジナルな授業がたくさんあります。社会科では、中1に「世界」という科目があります。通常は「地理」「歴史」「公民」という区分ですが、麻布では、世界の地理と歴史を総合して中1で「世界」として学ぶというわけです。私も授業内容を詳細に見たわけではないのですが、確かにその方が理解しやすいかもしれません。ユニークですね。
それ以外にも「総合教養」として、土曜日に特別授業を行っています。生徒たちは自分の興味・関心によって選択して受講しています。例えば、「三国志講読」「ラテン語入門」という高度な教養もありますし、「ロボットを作ろう、動かそう」「オペラを歌おう」のように楽しそうなものもあります。「西洋古典に見る人生観 -権力か、智慧か、恋愛か-」「初等量子化学入門」といった大学の講義のようなものもあって多種多様です。いずれにしても、生徒たちの高度な好奇心を刺激して、学習への意欲を喚起していると思います。

と、まあ自由で知的好奇心が喚起される「知のテーマパーク」と言ってもいいような空間が麻布の特色です。この高度な学びについて行ける男の子には、とても素晴らしい学びのステージと言えるでしょう。

なお、私が取材をしたのは、昨年の秋ですが、この4月から校長先生が交代しました。10年間校長を務めた氷上校長先生が退任されて、校務主任の平先生が新校長になられたとのことです。校長が代わっても、大きな教育方針の転換はないとは思いますが、ぜひ学校説明会に参加して新校長のお話を直にお聞きになってください!


伝統を感じさせる校舎は、噂ほどは汚くないです。



都心のわりには、まあまあ広い校庭。意外と静かです。